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税務

〈資格取得費・奨学金等の費用負担の取扱い〉

2023年5月9日

税務

政府がリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明し、学び直し・資格取得の機運が高まっている中、従業員の資格取得支援のために何ができるでしょうか。人材開発支援助成金といった制度もありますが、ここでは資格取得費・奨学金等の費用負担等に関する課税関係について一部紹介します。

①職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき

役員や使用人に、仕事に関係のある技術や知識を習得させるための費用を支給する場合があります。

この場合には、役員または使用人としての職務に直接必要な技術や知識を習得させ、または免許や資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用または大学等の聴講費用に充てるための費用として適正なものに限り、給与として課税しなくてもよいことになっています。

②学資に充てるための費用を支出したとき

使用人に、学資に充てるための費用を支給する場合があります。

この場合には、支給したこれらの費用が下記の「要件」を満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。

【要件】

1.通常の給与に加算して支給する費用であること。

給与として課税しなくてもよいものは、通常の給与に加算して支給されるものに限られますので、本来支給すべき給与の額を減額した上で、それに相当する額を学資金として支給するものなどは給与として課税されます。

2.次の(1)から(4)までのいずれにも該当しない費用であること。

(法人の場合)

(1)役員の学資に充てるため支給する費用

(2)役員や使用人と特別の関係がある者(注)の学資に充てるため支給する費用

(個人事業者の場合)

(3)事業に従事する個人事業者の親族(個人事業者と生計を一にする親族を除きます。)の学資に充てるため支給する費用

(4)使用人(事業に従事する個人事業者の親族を含みます。)と特別の関係がある者(注)(個人事業者と生計を一にする親族を除きます。)の学資に充てるため支給する費用

ただし、上記(2)、(4)の「特別の関係がある者」が、学資金等を支給する法人または個人事業者の使用人である場合で、かつ、その学資金等の支給がその「特別の関係がある者」のみを対象として支給されるものではない場合には、上記(2)、(4)に該当しないものとして取り扱って差し支えありません。

(注)「特別の関係がある者」とは、次に掲げる者をいいます。

イ 使用人(法人の役員を含みます。以下同じ。)の親族

ロ 使用人と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者およびその者の直系血族

ハ 使用人の直系血族と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情に ある者

ニ イからハまでに掲げる者以外の者で、使用人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者およびその者の直系血族

ホ イからニまでに掲げる者以外の者で、使用人の直系血族から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者

③従業員に貸与した奨学金の返済を免除した場合の経済的利益

従業員の高度な知識の習得を目的として、会社が指定する資格の取得を希望する従業員(役員を除く。)に対し、専門学校等の授業料等の資格取得に必要な費用に充てるための社内奨学金制度について、専門学校等に会社が授業料等を直接払い込む、奨学金免除を受けた従業員の給与が減額されることがない等、一定の要件を満たした場合、奨学金の返済を免除された従業員が受ける経済的利益は、学資に充てるため給付される金品(所得税法第9条第1項第15号)に該当し、給与所得の非課税として取り扱って差し支えありません。

④独立行政法人日本学生支援機構の企業の奨学金返還支援(代理返還)

令和3年4月1日より独立行政法人日本学生支援機構(以下、「機構」という。)の貸与奨学金(第一種奨学金・第二種奨学金)を受けていた社員に対し、企業が返還額の一部または全部を機構に直接送金することができるようになりました。

この制度を利用する場合の課税等の関係は次となります。

(1)【所得税】非課税となり得る

返還者にとって、企業が直接機構に送金することで自身の通常の給与と返還額が区分され、かつ奨学金の返還であることが明確となるため、その返還額に係る所得税は非課税となり得ます。

※返還者が役員である場合など一定の場合には、所得税の課税対象となることがあります。

(2)【法人税】給与として損金算入できるほか、「賃上げ促進税制」の対象になり得る

企業にとっては、代理返還は使用人の奨学金の返済に充てるための給付にあたるので、給与として損金算入されます。また、「賃上げ促進税制」の対象となる給与等の支給額にも該当することから、一定の要件を満たす場合には、法人税の税額控除の適用を受けることができます。

※賃上げ促進税制の詳細は当コーナー2023年3月2日掲載の〈賃上げ促進税制(令和4年4月1日以降開始の事業年度用)〉をご覧ください。

(3)【社会保険料】原則として、標準報酬月額の算定のもととなる報酬に含めない

奨学金返還支援(代理返還)による返還金は、原則として報酬に含めません。

※ただし、給与規定等により給与に代えて奨学金返還を行う場合には、報酬に含みます。

国税庁HPより

No.2601 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき|国税庁 (nta.go.jp)

No.2588 学資に充てるための費用を支出したとき|国税庁 (nta.go.jp)

従業員に貸与した奨学金の返済を免除した場合の経済的利益|国税庁 (nta.go.jp)

〔証券投資信託の収益の分配(第11号関係)〕|国税庁 (nta.go.jp)

独立行政法人日本学生支援機構HPより

企業の奨学金返還支援(代理返還)への対応 (jasso.go.jp)

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