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中小企業の金融基礎知識 連載第10回
2015年5月9日
10.リスケジュール
リスケジュールとは、毎月の融資返済が厳しくなり、金融機関に依頼して毎月の元金返済を少なくしてもらう事や、元利金の返済の猶予をしてもらう事を言います。
自社の状況を踏まえながら、追加融資が厳しい場合はこの選択も致し方ないと思いますが、そう簡単にはいかないのが現状です。リスケジュールをする事は確かに資金繰りを楽にする行為ではありますが、当初の条件どおり返済が出来なくなったことになるので、金融機関の評価がかなり下がります。当然ながら、条件を戻さない限り追加融資は出来なくなります。
(1) リスケジュールすると会社の評価はどうなるのか
7項で説明した銀行の格付けの話の中で「債務者区分」という事に触れましたが、リスケジュールをすると基本的には「要管理先」という位置付けとなり、金融機関はその債権に対し、引当金の率を大幅に上げなければなりません。ですので、金融機関もリスケジュールについては極力応じたくないのが本音です。
(2) 金融円滑化法
リーマンショック後の平成20年12月に業績悪化する中小企業を救う特別措置として「金融円滑化法」という法律が出来ました。この法律の意味は、金融機関が企業側からリスケジュールを申し込まれた場合、本来ならば「要管理先」債権にしなければならないものが、ランクを落とさずに「正常先」もしくは「要注意先」のままで良いです、という内容のものです。つまり、リスケジュール債権について引当金率の引き上げを行わなくてもよいという事になったのです。その為に金融機関が割りと積極的にリスケジュールに対応してくれるようになったのです。しかし、この法律は度重なる延長の末、平成25年3月を持って終了してしまったのです。ただ、終了してしまうと、金融機関はリスケジュール中の債権について引当金率を引き上げなければならなくなり、貸し剥がしの懸念もあるので、金融庁が猶予期間を設け、5~10年以内に経営改善が出来る企業であれば、引き続き「債務者区分」を落とさなくても良いということになりました。但し、その為には実現可能な抜本的経営改善計画書の作成が条件という事になりました。
(3) 経営改善計画書の運用
しかし、現状ですべてのリスケジュール先にそれを求めてくるかと言えばそうでもありません。それは、中小企業の場合、大抵は担保付融資か協会保証がついている為、そもそもの対象債権があまりないからと思われます。現実的には保証協会がOKを出せば、追加保証料を支払うことでリスケジュールに応じてくれる状況のようです。ただ、容易に応じてくれるからと言って甘えてはいけません。リスケジュールはあくまでも応急措置であり、その後の企業再生が最も重要で、金融庁がいう10年以内には黒字化、資金繰りの改善が出来て、条件を戻す努力が必要です。その為には、やはり実現可能な経営改善計画書の策定は必 要なのです。そしてリスケジュールの依頼の際には、その計画書を提示し、何を実行することで赤字経営を脱却し、いつになったら返済を開始できるのかを説明する事が大切です。
(4) 経営改善計画書の作成
しかし、実現可能な抜本的経営改善計画書といっても、作成する事は困難だと思われます。その為に国は「認定支援機関」というのを設けました。これは金融機関や税理士、弁護士等の専門家が国の認定を受け、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行える制度です。
我々も平成24年12月にこの認定を受けました。この認定を受けている専門家に経営改善計画のお手伝いをしてもらえるのです。費用についても、今のところ国が係る費用の2/3を負担してくれる補助金があるので、かなり安価な値段で経営改善計画を策定する事が出来ます。
(5) リスケジュールのルール
リスケジュールには暗黙のルールがあります。例えばA銀行とB銀行にそれぞれ借入があるとします。A銀行の債務のみリスケジュールしてB銀行の返済はそのままというわけにはいかないのです。元金返済を0にしてもらうならば、AとB両方の同意を得なければなりません。ただ残債の多い金融機関に交渉をしてOKがでれば、他行はよほどの事がない限りNOとは言いませんので、交渉する順番は残債の多いところからはじめると良いでしょう。元金返済をする際も同様で、その場合はそれぞれの残債額の割合で返済をしなければなりません。仮にA銀行に1000万円、B銀行に500万円あったとして、A銀行に10万円返済することになれば、B銀行にも5万円返済しなければならないのが、暗黙のルールとなります。
(6) リスケジュールを行う際の注意点
長々といろいろな説明をしましたが、現状を話すと金融機関はリスケジュールには応じてくれます。但し、資金繰り悪化→追加融資出ない→リスケジュールと安易に考えてはいけません。リスケジュールをすると追加融資は一切でないので、自社の現状を十分把握し、資金繰り悪化の要因が元金返済の猶予を受けるだけで改善するのかどうか、最低でもこれを見極めないと近い将来確実に資金ショートします。何度も言いますが、リスケジュールという結論の前に必ず自社の状況を見極めてください。そして、リスケジュール以外に出来うることは行い、返済猶予を受ければ何とか資金が廻る算段がついてからリスケジュールを行うようにしてください。自分自身で決断するのではなく、税理士などの専門家とよくよく相談しながら実行に移してください。
※リスケジュールの決断は、資金繰りに精通する専門家の意見を聞きながら行うことが必需です。上記経営改善計画書の件も含め、悩んだらまず当社に問い合わせてください。
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平成27年4月からのセーフティネット保証5号の指定業種
2015年4月7日
経済産業省より、業況の悪化している業種に属する事業を行う中小企業者を対象とするセーフティネット保証5号について、平成27年度第1四半期の指定業種が公表されました。
平成27年4月1 日から平成 27年6月30日までのセーフティネット保証5号(別紙1参照)の対象業種については、別紙の業種(別紙2参照)を指定することとなりました。
指定業種は、254業種となり、前回の224業種より増加しました。
一般土木建築工事業・土木工事業・建築工事業・鉄骨工事業・防水工事業・ゲ-ムソフトウェア業・家具小売業・ドラッグストア等は、指定業種から除外され、新たに鉄筋工事業・金属製建具工事業・木製建具工事業・土地賃貸業・駐車場業・産業廃棄物処分業・産業廃棄物収集運搬業等が追加されました。
「経済産業省ホームページ」
別紙1:セーフティネット保証5号の概要
http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150313005/20150313005a.pdf
別紙2:セーフティネット保証5号の指定業種
http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150313005/20150313005b.pdf
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中小企業の金融基礎知識 連載第9回
2015年4月7日
9、赤字企業の資金調達
今まで、金融機関の仕組みなどについて、説明してまいりましたが、この項は少し今までとは違い、赤字企業の資金調達について語っていきたいと思います。
(1)赤字企業の資金調達のリスク
企業実績が赤字であれば、大抵それに従い資金繰りが悪化していると思われます。
ただ、業績悪化すると金融機関に避けられてしまう、その為に資金調達は難しくなります。それでも、業績悪化を隠し、金融機関に融資を申し込む、それで断られれば、ノンバンクの高金利融資に走る、こういった企業も少なくありません。
これは、確実に後々の自社の資金繰りを悪化させる原因となります。
確かに赤字脱却の為に資金調達は欠かせないものです。しかし、その調達の意味が「黒字転換の為の前向きな調達」なのか「赤字補填の為の後ろ向きの調達」なのかで意味合いは大きく変わってきます。
大抵のケースは、後者であり、後々大変な思いをされている方は少なくありません。
しかし、本来は前者の事由でなければいけません。その為にはどうすれば良いのでしょうか?
(2)まずは自己分析!
まずは赤字になった要因を分析することです。その要因は果たして一過性のものなのか経常的なものなのか、黒字転換する為にその赤字要因を切り捨てるべきかどうかなどを検証しましょう。そして要因がわかったら、その解決方法を探り、その為に資金が必要であるという結論に達してから、調達を実行すべきです。
例えば、売上悪化が赤字要因であった場合、なぜ売上が伸びないのかを徹底的に分析し、人材不足なので人員を増やす必要性や誘致活動の為の広告の必要性などが結論として出た場合、その必要資金を積算して融資を申し込むといった感じです。
(3)融資を受ける場合には返済していくことをイメージする事
融資を受ける前に、借りたはいいけど返せるのかどうか、黒字転換はいつ頃なのか
をきちんとイメージする必要があります。借りてから考えれば良いなどと思っていると確実に資金ショートを起こします。そのためには資金繰り予定表と短期の事業計画を策定し、検証することがとても大事になります。
(4)赤字補填の為の資金繰り
そうは言っても、黒字転換の道が明確に見えてこない・・・そんな方々もいらっしゃると思われます。それでも企業は日々営業活動を続けているので、何もしなければ資金ショートを起こしてしまうからどうしても赤字補填の資金調達に走るしかない、そう言う思いをされた方々も少なくありません。
しかし、そうであっても待ってください。資金調達をせずとも資金繰りを改善する方法はあります。一番手っ取り早い方法は、銀行に対し返済条件の緩和をお願いすることです。これをリスケジュールと言います。これについては次項で詳しく説明いたします。
後は、今までの経験の中から以下のような事を実行すると、資金繰り改善となります。
①売掛金回収を早める
②在庫の消化(不良化しそうなものは多少ディスカウントしてでも売り捌く)
③不要資産の売却
④経費のチェックをして無駄なものは省く
⑤保険(特に生命保険)の見直しをして不必要だったりするものは解約する
⑥会社の資金繰りだけでなく経営者個人の資金繰りも見直し、生活する上で
最低限必要な額を把握しておく(いざというときは役員報酬減額する為に)
⑦買掛金等の支払を延ばす
⑧支払の優先順位を常に頭に入れておく
(5)支払の優先順位
資金繰り悪化は当然のように支払>収入というバランスから生じるものです。
支払先には種類があって、仕入代金の支払から社員の給与、銀行返済など様々です。
今ある現預金よりも支払額が多ければ当然何かしらの支払が滞ることになりますが、
この優先順位を間違ってはいけません。
それと、今日の明日資金が足らないといった状況は避けてください。その為には常に資金繰り表の作成をして、いつ資金が足らなくなるのかを事前に把握して早めに手を打つことが大事です。
※資金繰りにお困りであればいつでも当社に連絡ください。前述の支払の優先順位も含め、相談に乗ります。
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リターンアシスト長期保証制度要綱について
2015年3月20日
神奈川県信用保証協会が、中小企業者の金融取引正常化を推進することを目的とする
リターンアシスト長期保証制度を設けました。
神奈川県保証協会に保証債務残高を有する中小企業者であって、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図る為の臨時措置に関する法律」等により、保証付融資の返済猶予や返済期間の延長などの返済条件を変更している借入について、経営改善計画の取り組みの一環として借換えることにより返済の継続を図ります。
詳しいことは 神奈川県信用保証協会のホームページに記載されております。
(下記のURLをクリックするとホームページに移動します)
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日本政策金融公庫の金利変更
2015年3月8日
日本政策金融公庫の金利が、平成27年2月12日より変更となりましたので、ご紹介させていただきます。
国民生活事業(主要利率一覧表)
事業資金に関するご融資
お使いみち、ご返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。 くわしくは下記の日本政策金融公庫のリンクをご覧下さい。
http://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html
中小企業事業(主要利率一覧表)
- ご融資に際しては、ご契約日時点での貸付利率が適用されます。 2.利率は、標準的な貸付利率です。適用利率は、信用リスク(担保の有無を含む。)等に応じて所定の利率が適用されます。
詳しくは、下記の日本政策金融公庫のリンクをご覧ください。
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日本政策金融公庫の金利変更について
2015年3月4日
日本政策金融公庫の金利が、平成27年2月12日より変更となりましたので、ご紹介させて いただきます。
国民生活事業(主要利率一覧表)事業資金に関するご融資 お使いみち、ご返済期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。 くわし くは下記の日本政策金融公庫のリンクをご覧下さい。 http://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html
中小企業事業(主要利率一覧表)
1.ご融資に際しては、ご契約日時点での貸付利率が適用されます。 2.利率は、標準的な貸 付利率です。適用利率は、信用リスク(担保の有無を含む。)等に応じて所定の利率が適 用されます。
詳しくは、下記の日本政策金融公庫のリンクをご覧ください。 http://www.jfc.go.jp/n/rate/base.html
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中小企業の金融基礎知識 連載第8回
2015年3月3日
8、格付けの決定方法~格付けアップを図ろう!~
前項で述べたように、金融機関には独自の審査に基づいた「格付け」があります。では、この格付けはどのように決定されるのでしょうか?仕組みを理解したうえで自社にて取り組める事を行い、一つでも良いランクを目指しましょう。
(1)定量要因
格付けは決算ごとに「定性要因」と「定量要因」に分けて評価し決定されます。
「定量要因」とは決算書の数字を分析した結果から算出されます。
大きく分けると以下の通りです。※金融機関によってバラツキあります。あくまでも一般的なものを掲載しています。
○安全性 経営の堅実度
自己資本比率 自己資本÷総資産 企業体力測定 多↑ ギアリング比率 (短・長期借入+社債)÷自己資本 借入と自己資本の割合 少↑ 固定長期適合率 固定資産÷(固定負債+自己資本) 固定資産を長期資金で賄えているか 少↑ 流動比率 流動資産÷流動負債 即金化の算定 多↑ ○収益性 経営の効率性
経常利益率 経常利益÷当期売上高 対売上効率 多↑ 総資本経常利益率 経常利益÷総資産 資本運用効率 多↑ 黒字決算 何期連続黒字であるか 多↑ ○成長性 事業の将来性
経常利益増加率 (当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益 規模拡大の測定 多↑ 自己資本・総資産額 財務の安全性 多↑ 売上高 企業の成長性 多↑ ○返済能力 企業の返済能力
債務償還年数 有利子負債÷償却前経常利益 返済必要年数 少↑ インタレストカバレッジレシオ (営業利益+受取利息配当金)÷支払利息割引料 利息支払能力 多↑ キャッシュフロー 経常利益+当期減価償却額 返済の確実性 多↑ これらを上げるためには具体的な経営改善をする必要があります。その為の改善計画
の仕方については後に述べることとします。
(2)定性要因
定性要因とは、市場動向や経営者の状況、経営状態、営業基盤や競合状態などその企業の持つ数字では表せないオリジナルの要因です。
一般的には都市銀行はこの定性要因を見てくれないケースがあるようですが、地方銀行だと30%、信金クラスだと40%は加味してくれるようです。
定性要因は一般的に以下のような項目について金融機関担当者の主観でポイント化されるようです。
- 経営者の経営能力及び個人資産力
- 後継者の有無
- 社内環境の良好さ
- 企業の競争力
- 対銀行取引の良好さ
- 財務管理の徹底
- 経営計画の有無 など
経営者は、常に上記の事を念頭に置くことが自社の格付けアップにも繋がるのです。
経営者は常に前向きで、リーダーシップを発揮し、社員に対する思いを忘れず、自社の取扱い商材や商圏に対しアンテナを張り、良いものはいち早く取り入れ、悪いものは素早く排除する。そして、先見の目を持ち、困ってから金融機関に頼るのでなく、常に自社の状況を報告する。自社分析を常に行い、計画を策定し遂行する。これらは全て経営者に必要不可欠なスキルです。